現在、被災三県(岩手県・宮城県・福島県)では復興のための土砂等(土取り場からの購入土や、宅地造成による切土など)の調達が進められている一方で、災害廃棄物や津波堆積物の処理によって得られた「復興資材」の一部は、その利用用途確保が課題となっています。この課題解決にあたっては、 これら資材の物性・力学特性・環境安全性に基づき利用可能な用途を把握し、 利用による社会的な便益を明らかにすることで、用途ごとに利用を優先するべき資材を提言し国等へ働きかけを行うことが必要であります。
一方で、被災三県以外においても、建設工事に伴う発生土や、スラグ・石炭灰のような産業副産物が発生しています。これらの「循環資材」については輸送等による環境負荷増大と、土取り場開発による新たな自然改変の抑制や土捨て場・最終処分場の浪費の回避等とのバランスを整理することにより、場合によっては、復興資材に準じた利用の合理性を付与できる可能性があります。
そこで、国立環境研究所では平成 25 年度において、さまざまな調査・検討を行い、地盤工学会に提言のための委員会を設置し、調査・検討の成果に基づき、復興資材、循環資材を含めた資材等の有効利用のあり方について提言することを目指しており、これらを具現化するために、東日本大震災で発生した膨大な量の災害がれきについて、岩手県、宮城県、福島県の発生量ならびに処理現状を踏まえた利用実態等の調査業務を行うとともに、がれき由来資材の力学的評価を実施し、利用条件となる指標を定めるための試験工事が公告されました。
本業務内容は、協会のこれまでの活動を活かして、震災復興に間接的に寄与できるものであり、入札に参加できるよう“全省庁統一資格”を取得するとともに本業務における提案書ならびに見積書を作成し、応札したところご下命いただくことができました。
<主たる業務内容>
・被災三県各県における必要資材量と災害廃棄物由来の復興資材量とのバランスの詳細調査
・発生土や産業副産物に対して、用途毎に遵守すべき利用条件、要求品質の整理
・関係法令、条例等の整理
・実機によるフィールド試験工事
・学識者による検討委員会の設置運営
(委員長:京都大学 勝見武教授)
<調査期間>
平成25 年7 月〜平成26 年2 月
<本業務に関する協会担当者>
・総括者:野口真一
・担当者:中村吉男、西川美穂
(独)国立環境研究所から受託いたしました「災害からの復興における災害廃棄物、建設副産物及び産業副産物の有効利用のあり方に関する調査業務」が完了いたしました。
本業務は、下記5項目の調査・検討を行い、地盤工学会に提言のための委員会を設置し、各種調査・検討の成果に基づき、復興資材、循環資材を含めた資材等の有効利用のあり方について提言書を作成することを目指すものであります。
(1) 被災三県各県における必要資材量と災害廃棄物由来の復興資材量とのバランスの詳細調査
(2) 他県からの輸送によるコストや環境負荷の増加量の算定
(3) 県間の副産物・発生土等の流通等に関係する法令、条例等の整理
(4) 発生土や産業副産物に対して、用途ごとに遵守すべき利用条件、要求品質の整理
(5) フィージビリティスタディの実施(物性・力学特性・環境安全性試験を含む)
<調査報告書 目次>
1.業務概要
1-1.目的
1-2.業務内容
1-3.用語の定義
2.災害廃棄物、土木資材等の調査
2-1.災害廃棄物等の調査
2-2.必要土木資材の需給状況調査
2-3.購入土等の現状調査
2-4.建設副産物の調査
2-5.産業副産物の調査
3.土木資材の輸送等による費用および環境負荷の計算
3-1.土木資材の輸送による費用および二酸化炭素排出量の算定
3-2.土木資材の輸送に伴う一般的環境影響評価項目の検討
4.法令、条例等の関係制度の整理
4-1.災害対策に関する関係法令・指針等の整理
4-2.建設副産物および産業副産物に関する関係法令・指針等の整理
5.各種用途に対する物性・力学特性ならびに環境安全性に関する要求品質の整理
5-1.目的
5-2.物性・力学特性ならびに環境安全性に関する要求品質について
5-3.利用用途ごとの要求品質について
5-4.品質管理基準(案)の作成
6.フィ-ジビリティスタディ
6-1.目的
6-2.業務内容
6-3.室内基礎試験
6-4.現地混合処理試験および盛土の造成
6-5.盛立試験結果
7.震災復旧・復興技術について
そして、本報告書を基礎資料として、(公社)地盤工学会 「災害からの復興における災害廃棄物、建設副産物及び産業副産物の有効利用のあり方に関する提言検討委員会(以下、復興資材提言委員会)」において、岩手県、宮城県、福島県、復興庁、農林水産省、国土交通省、環境省ほか関係機関・団体からの情報提供、調査協力、助言等のもと、提言ならびに提言の解説がとりまとめられました。 今後の復興事業において、今回の提言や準備しているガイドラインが、セミナーなどを通して認識され、復興資材活用の後押しになることを期待しています。
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